ホモシステインって何?

肉や魚などの食事から、体内に取り込まれたタンパク質は、消化されてアミノ酸に分解されますが、必須アミノ酸のひとつである
「メチオニン」の生成途中で出来るのが、「ホモシステイン」です。
このホモシステインが代謝されると、メチオニンや非必須アミノ酸の「システイン」に変換されます。

メチオニンとは、アレルギーによるかゆみの軽減をしたり、肝臓で、毒素や老廃物の排除や代謝を促進したり、また、脂質を
乳化させます。また、メチオニンからシスタチオニンに変換され、その後システインになります。システインは、坑酸化作用
(活性酸素の除去)や、代謝を促進させて、メラニン色素の生成を抑制したり、肝臓の解毒作用を行います。

私たちが、タンパク質を摂ると必ず出来てしまうホモシステインは、なぜ、「悪玉化したアミノ酸」と言わるのでしょうか?

どうやら、問題なのは、ホモシステイン そのものよりも、ホモシステインが血中で増えすぎることのようです。
ホモシステインが血中で増えすぎてしまい、ホモシステインの血中濃度が高くなり、高ホモシステイン血症になると、
酸素や水と反応し活性酸素が発生してしまいます。

活性酸素は、動脈硬化をはじめ、がん、心筋梗塞、脳卒中、肝炎、腎炎、リウマチ、糖尿病の合併症、シミやシワなどの
病気に関連していますが、ホモシステインの血中濃度が高くなることで、虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症)、脳血管性障害
(脳梗塞など)を引き起こす原因になるのです。

さらに、血管の内側の細胞を傷つけて、動脈硬化のリスクを高めたり、高血圧も引き起こしてしまいます。
また、骨コラーゲンを劣化させる要因になることから、骨粗鬆症になりやすくなります。

ホモシステインが認知症のリスクを上げる。

深刻なのは、認知症の発症のリスクを上げてしまうということです。

高ホモシステインによって脳血管障害がおこると脳血管性認知症に繋がる可能性が高くなります。それだけではなく、
アルツハイマー病をはじめとする認知症を引き起こす要因になっていることも報告されています。

ホモシステインが、アルツハイマー病の原因物質である「アミロイドβタンパク「や「タウタンパク」の蓄積を促してしまい、
アルツハイマー型認知症のリスクを高めてしまうのです。
残念ながら、加齢とともに、血漿中や細胞内のホモシステイン濃度は上昇してしまいます。

では、ホモシステインを血中からなくしたり、減らすことは出来ないのでしょうか?

ホモシステイン代謝に欠かせない栄養素

ホモシステインが、メチオニンやシステインに代謝され、循環が上手く行われるために、欠かせない栄養素があります。
それが、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12なのです。
これらの栄養素は、ホモステインの血中濃度を低下させ、無毒化する働きがあります。
別の側面から見れば、欠乏しているとホモステインの代謝が上手くいかず、血中濃度が高くなり動脈硬化や
認知症のリスクが高まるということです。
葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12を合わせて摂ることが、より効果的です。この3つの栄養素は深い関わりがあるので、
どれか1つ欠けていても上手く働きません。

①葉酸

葉酸は、「ビタミン」という名前こそ付いていませんが、ビタミンB群の1種で、葉物野菜に多く含まれています。
でも、葉酸だけ摂ればいいというわけではありません。葉酸は、B12とともに、正常な赤血球の形成と細胞の遺伝物質で
あるDNAの合成に不可欠な物質です。葉酸が不足すると、DNAの合成が上手くいかず、その修復も上手くいきません。
ビタミンB12と協力し合って、赤血球の形成(造血作用)を行うため、不足すると貧血も起こりやすくなります。

また、高齢者においては、葉酸の摂取が少ないと骨折のリスクが増加します。

ビタミンB群は水溶性なので、加工すればどんどん抜けていきます。例を挙げると、採れたての野菜のサラダの場合は、
まだ、ビタミンB群の摂取量も多いのですが、コンビニのサラダでは、野菜を洗ったり消毒することで、かなりの量の
ビタミンB群は、失われていると思われます。現代人の食生活では「野菜を食べている」という自覚があっても、ほとんど栄養に
なっていないことが多くなっています。長時間の加熱調理によって、食物中の葉酸の多くが破壊されているのです。

体には、少量の葉酸しか蓄えていないので、葉酸が少ない食事を続けていると、体に問題が生じ、数か月後には葉酸欠乏症に
なります。現代の食生活では、葉酸が欠乏するのは分かるような気がします。

気を付けなくてはいけない人は、大量に飲酒をする人は、十分な葉酸を摂取出来ていません。お酒が好きな人ほど低栄養で、
大量のアルコールによって、葉酸の吸収と代謝が妨げられています。
また、人工透析の治療を受けている方は、腎臓の代わりに血液中の老廃物や余分な水分を透析液で取り除くため、葉酸だけでなく
ビタミンヤミネラルなどの栄養素を再吸収できないので、ビタミン不足やミネラル不足に注意しましょう。

②ビタミンB6

ビタミンB6は、ほとんどの食物に含まれているので、食事による欠乏症はあまりありませんが、アルコールやタバコ、薬剤などは、
ビタミンB6の吸収を妨げるので、欠乏症が起きることがあります。
欠乏症になると皮膚炎、貧血、虫歯、下痢、食欲不振などの症状が起きてきます。

 

③ビタミンB12

ビタミンB12には、葉酸を活性化させる働きがあるため、葉酸とセットでとることが望ましい栄養素です。働きは、葉酸と同じで、
赤血球の形成と成熟、細胞の遺伝子であるDNAの合成に必要です。神経を守り、正常な働きをさせるためには必要な栄養素です。
ビタミンB12は、体に必要とされるまで、十分な量が肝臓に蓄えられていると言われていますが、もしも、ビタミンB12を
摂取しなくなった場合、普通は約3年から5年で蓄えられている量が使い切られてしまいます。

高齢になると、胃酸などの消化酵素の分泌が悪くなり、栄養の吸収が悪くなりますが、特にビタミンB12は、胃酸が必要とされています。
病院で、胃の調子が悪いときに、処方される「H2ブロッカー」と言われるお薬は、かえって胃酸の分泌を抑えるので、消化が悪くなり、
結果的にビタミンB12の吸収も悪くなってしまいます。

ビタミンというと、野菜や果物に多いような気がしますが、ビタミンB12は、植物性植品には殆ど含まれず、動物性食品に多く含まれます。
加齢にともない、消化しやすい食材を選び、肉類やレバー、卵などを避けて、菜食中心の生活を送っているとビタミンB12は
不足してしまいます。

60歳以上の人が、ビタミンB12が不足すると神経の損傷を起こすこともあるので、ビタミンB12欠乏症には注意しましょう。

                                            「ボケない人の最強の食事術」(青春出版社 /今野裕之 著)参照