認知症は身近な問題

65歳以上の認知症とその予備軍の人数は「4人に1人」。85歳以上になると「2人に1人」。
つまり、85歳以上の半数の人が認知症とその予備軍と言われています。

今、食べているものが、将来、認知症になるかならないかを決めるとしたら、それはもう一大事です。

どんなに健康に気を使って、食材にこだわって上質なものを食べていても、食べ方次第で認知症になるというのなら、
一日でも早く、正しい「食べ方」に切り替えることが必要になってきます。

『リコード法』を考案したアルツハイマー病の権威であるデール・プレデセン博士は、アルツハイマー病の原因は日々の食事や生活習慣にあると、
最も重要視しているのが食生活でした。
※「リコード法」: 2014年にアメリカの医師 デール・プレデセン博士が発表したアルツハイマー病の治療プログラム。

好きなものを好きなだけ食べて、「あー元気だ、健康だ」と思っていては大間違いです。今こそ、「食べ方」を見直してみましょう。
では、具体的に「食べ方」とは、どうすればいいのでしょうか?  
                             

この数年、「健康志向ブーム」が続き、テレビや雑誌で紹介された野菜や食材は、あっという間に陳列棚からなくなるという映像は
テレビでもよく紹介されています。「私は、食事に気を付けている」「私は、体に良いと言われているものを摂っている」そういった声も
聞こえてきそうですが・・・。

「栄養不足」から認知症は始まる

大事なことは、何を食べて、何を食べるなという単純なことではありません。問題にすることは「栄養不足になっていないか」と言うことです。
まずは、その「栄養」について復習していきましょう。

私たちの体は食べたもので出来ています。食物に含まれているさまざまな成分を栄養素といい、炭水化物(糖質)、脂質、タンパク質、ビタミン、
ミネラル(無機質)に分けられます。

三大栄養素と言われる、炭水化物(糖質)、脂質、タンパク質は、生命活動に必要なエネルギーですが、その中でも、タンパク質は、
細胞を構成する主要な成分であり、体を調節する機能成分を持ち、生命の維持に欠くことができないものです。

タンパク質は、多数のアミノ酸がつながっており、私たちの体は、20種類のアミノ酸から成り立っています。
このアミノ酸は、「必須アミノ酸」と、「非必須アミノ酸」と大きく2つに分けられ、そのうち、人間の身体に必要でありながら体内で
つくることのできないものを必須アミノ酸といいます。

アミノ酸の種類

必須アミノ酸
バリン、ロイシン、イソロイシン、リジン、スレオニン、ヒスチジン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニン
非必須アミノ酸
グリシン、アラニン、セリン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、アルギニン、システイン、チロシン、プロリン

また、食事の面から考えたときに、必須アミノ酸を欠かせないという意味で「不可欠アミノ酸」、それ以外のアミノ酸は、体内で合成ができるので
「可欠アミノ酸」という言い方もするようになってきました。

タンパク質の働き

体の中に摂り入れられたタンパク質は、アミノ酸に分解されて、筋肉、皮膚、毛髪、爪、臓器、神経などの細胞組織の成分や、酵素、ホルモン、
免疫物質、筋収縮や栄養素の運搬など、それぞれの働きに必要なタンパク質に生合成されます。また、糖質の摂取量が足りないときには、分解されて
エネルギーとして消費されます。

また、遺伝子情報のDNAもアミノ酸から作られています。

私たちの体は、脂肪は貯えることができても、アミノ酸は貯えることはできません。必須アミノ酸は、毎日の食事から必ず摂ることが必要とされます。

アミノ酸スコア

食品中のたんぱく質の品質を評価するための指標に「アミノ酸スコア」というものがあります。アミノ酸スコアとは、食品中の必須アミノ酸の
配合バランスを点数化したもので、この点数が100に近いほど「良質なタンパク質」であることが言えます。

厚生労働省HPの中の、Ⅲ栄養指導に掲載されている「食品のアミノ酸スコア」を見てみましょう。アミノ酸スコアの高い食品は鶏卵、牛乳、牛肉、
鶏肉、鯵、鮭、等。いずれもスコアは100です。では、主食になる米やパンを見てみましょう。精白米は61点、パンは44点で、動物性タンパク質ほど
スコアが高いことがわかります。

食品中に必須アミノ酸が1つでも不足していると、タンパク質としての栄養的価値が下がってしまいます。

「アミノ酸の桶」理論

アミノ酸は、タンパク質の材料になる重要な成分ですが、特定の必須アミノ酸が不足すると、それを材料の一部とするタンパク質が十分に
合成されません。上の図は、桶をひとつの食材に、桶板1枚1枚を必須アミノ酸に例えたものです。
アミノ酸スコア100のところには点で印が付いています。
1枚1枚の桶板の高さが印以上あると、桶の中の水が溢れません。これは、全てのアミノ酸が満たされていると、体のなかでは、十分な
タンパク質が生成されると考えられます。反対に、桶板の長さが1枚でも短いと、いくら水を入れても水が溢れだして、満水にはならないことを
表します。

他のアミノ酸がいくらたくさんあっても、一番少ないアミノ酸の量の分しか水はたまりません。(この水が「タンパク質」です)。

水が溜まる分しか、アミノ酸は有効に活用されないので、せっかく他に、たくさん摂ったアミノ酸がムダになってしまうということです。
そのため、アミノ酸をバランスよく摂取することは、とても重要になってきます。これが「アミノ酸の桶」理論と呼ばれています。

例えば、米やパンは図にもあるように、必須アミノ酸であるリジンが不足しているので、リジンの高さまでしかタンパク質を貯めることが
できないということになります。

その場合、リジンが豊富な鶏肉などの動物性食品などと一緒に摂り、アミノ酸バランスを調整し、アミノ酸スコアを高めます。
また、植物性のタンパク質でも、数種を組み合わせて食べることで、必要な栄養価を満たすことが出来ます。

このように、アミノ酸が1種類でも不足していると、不足した必須アミノ酸の量に、合わせて利用されるため、単一の食材を摂取し続けることと
体内バランスが非常に悪くなるので、いろいろな食材をバランスよく摂取し、必須アミノ酸の利用効率を最大限生かすことが必要となります。

高齢になって、肉や乳製品、卵、魚類などの動物性のタンパク質を摂ったらいいといわれるのは、食が細くなってしまうことで、摂取量が
少なくなり、それによって、タンパク質が不足してしまう可能性があるので、量を多く摂らなくても、良質のタンパク質を摂取できるからです。

また、認知症予防という意味では、タンパク質を多く摂ると、体内で、「コリン」という栄養素が合成されますが、このコリンは、神経伝達物質の
アセチルコリンの材料となる栄養素で、特に記憶力に関係しています。

そもそもの栄養素の働きを知り、体を作るうえで、どう使われていくのか?食事を作るときには、どう組み合わせたらいいか?
関心を持っていくことが大切です。

                                   「ボケない人の最強の食事術」(青春出版社 /今野裕之 著)参照

                                       

 

 

 

 

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