ビタミン、ファイトケミカル、食物繊維、オリゴ糖・・・どれも植物由来の栄養成分です。

「植物といかに関わっていくか」が健康のカギになってきます。

パンよりご飯をすすめる本当の理由

炭水化物は、糖質と食物繊維に大きく分けられます。

エネルギー源のイメージがありますが、食物繊維も含めて炭水化物なのです。米や小麦も食べやすく精製し、

白米や小麦粉にすることで、食物繊維はほとんど失われ、ご飯やパンに含まれる成分は、エネルギー源である糖質が中心になりました。とりわけ、パンは、いったん粉にした小麦を固めているため、食べると口の中ですぐに溶け、粒のままの米よりもあまり噛まずに吸収できます。しかも、食べ合わせるおかずも、油を使った炒め物、揚げ物が多くなり、精製されて失ってしまった食物繊維を補う機会があまりありません。さらに言えば、スナック菓子、ケーキ、チョコレート、精製飲料水などを手軽に口にできるようになり、精製した糖質の割合はどんどん増していきました。

こうした精製糖質漬けの現状を考えると、糖質制限をすすめる人たちの気持ちもわからなくはありませんが、

問題の核にあるのは、「精製して食物繊維を除くことで吸収のスピードが急激になった」ことにあるはずです。

同じ糖質であっても、食物繊維の多いものを食べていたら、吸収はゆっくりで、そこまで高血糖の問題には悩まされません。そもそも、ジャガイモ、サツマイモ、里芋などのイモ類、人参などにも糖質が多く含まれていますが、それを砂糖や小麦粉と同列で議論するのはずいぶん乱暴でしょう。

ご飯については、たとえ白米であっても、食生活全体で植物をとる機会を増やし、トータルでゆっくり消化できる内容に変えていけば大きな問題はありません。その上で、精製していない玄米、一部を精製した分づき米に主食を切り替え、食物繊維の摂取量を増やしていけば、なおいいでしょう。

ヒエやアワ、キビ、キヌアなどの雑穀を加えたり、押し麦を加えて麦ご飯にしたりして、精製して失われた栄養素を補っても構いません。食物繊維のほか、ビタミンやミネラル、ファイトケミカルなど植物の成分をいろいろな形で増やすようにしてください。

今、注目の食材「大麦」

最近では、小麦に含まれるグルテンというタンパク質を取り除いた「グルテンフリー」のパン、麺類などが出回るようになりました。グルテンはパンや麺類のモチモチした食感のもとになりますが、消化に負担をかけ、「リーキーガット」の原因になると言われています。体調が良くない人は、小麦の摂取量を減らすのも検討していいでしょうが、大事なことは「多様なものを食べる」ということです。

特定の成分だけに目くじらをたてるのではなく、食事全体の中で精製したものを減らしていってはどうでしょうか?ふわふわの菓子パンやサンドイッチばかり口にしていたら、食物繊維が不足し、腸内環境もどんどん悪くなってしまいますが、精製していない全粒粉、ライ麦などのパンであればそうした問題も少ないでしょう。

小麦粉を食べたいのであれば、なるべく自然に近いものを選ぶことです。最近は、大麦の健康効果に注目が集まっています。

大麦というとビールの原料として知られていますが、大麦のいいところは、水溶性の食物繊維が豊富なところでしょう。不溶性の食物繊維と比べて腸内細菌のエサになりやすく、水で膨らむため少量でも満腹感が得られ、

食べ過ぎの防止にもつながります。

大麦を煎って粉にした「はったい粉」がおすすめです。はったい粉は麦こうせんともいい、いわば大麦の全粒粉にあたりますから、水に溶いてパンケーキのように焼いていただくといいでしょう。また大麦を焙煎した麦茶を飲む習慣をつけるのもおすすめです。ビタミン、ミネラルが豊富で、ノンカフェイン・ノンカロリーなのでたくさんとっても体に負担はかかりません。

食物繊維のもう一つの効用

食物繊維のもう一つの効用は、通常、食べ物をエネルギーに変えるには、小腸から栄養素を吸収して全身の細胞へ運んでいく必要がありますが、大腸に運ばれた食物繊維は菌の働きで、分解され、腸の粘膜をつくっている細胞のエネルギー源になります。かつては、そのまま排泄されると考えられていた食物繊維ですが、その一部は大腸から吸収され、エネルギーに変えられていたのです。

腸内細菌は、食物繊維を分解した際、乳酸、酢酸、酪酸などの短鎖脂肪酸を生み出します。乳酸や酢酸が分泌されると腸内のPH(水素イオン濃度)が酸性に変わるため、有害な菌の繁殖が抑えられることもわかっています。

短鎖脂肪酸はエネルギー源として利用されたり、腸管上皮細胞の増殖を促進したり、杯細胞という細胞から粘液を分泌させたりする働きもあります。

粘液は、腸管上皮細胞に触れないためのバリアの役割を果たし、免疫が過剰に働くのを抑制しています。腸内細菌の中には有害な菌も含まれますから、こうした粘液のバリアも必要になるのです。また、短鎖脂肪酸には、免疫の過剰反応を抑える制御性T細胞を誘導するという報告もあります。

腸の上皮にあたる粘膜の一帯はとてもデリケートですから、こうした食物繊維の供給がなければ小腸は機能低下を起こし、病気への抵抗力が落ちるほか、アレルギーや自己免疫疾患の原因になることもあります。

善玉菌である乳酸菌の仲間は、ビフィズス菌や乳酸桿菌、乳酸球菌など様々な種類があり、動物によって共生している種類が違っています。そのため、ヨーグルトに含まれる乳酸菌が仮に生きたまま腸に届いたとしても、都合よく増殖したり、他の菌と共生したりするとは限りません。それよりもこうした菌のエサになる食物繊維を毎日の食生活を通してこまめに取り入れていくことです。

炭水化物の中では、食物繊維のほかにオリゴ糖も分解されないまま大腸に運ばれ、乳酸菌のエサになることがわかっています。こちらも野菜や果物をとっていれば自然と補給することが出来ます。

こうした糖の仲間が菌の力で分解され、乳酸などが分泌されることを発酵と言います。食物繊維のような乳酸菌のエサになるものを取り込むことで、発酵が進み、腸の健康状態が保たれているのです。

出典 「佐古田式養生で120歳まで生きる ~ する・しない健康法」  佐古田 三郎 著

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