たんぱく質は、認知症予防に必要な栄養素

 年をとってくると食欲が落ちて、なかなか、たんぱく質を食べなくなったと言われる方が多いようです。たんぱく質と言うとすぐに、肉をイメージしますが、年を重ねるごとに、肉や脂っこいものが食べられなくなってきます。その理由は、消化器官の機能が衰えて来るから、どうしても消化に時間のかかる料理は避けるようになるのです。それに、運動量も減ってくるので、食欲も出てこないのです。

しかし、食欲が湧かないからと言って摂らないわけにはいきません。たんぱく質は、体を作る基礎になり、皮膚や筋肉、血管、内臓、骨、歯、爪や酵素やビタミンに至るまで、私たちの体をつくる材料になっているからです。また、たんぱく質は認知症予防に関係しているので、積極的に摂らなくてはいけない栄養素なのです。

たんぱく質を摂ると体内でコリンという栄養素が合成されます。コリンとは、神経伝達物質のアセチルコリンの材料になる栄養素で、細胞膜を形成する働きのほかに、脂質の輸送や代謝、遺伝子の発現、神経や脳の発育促進などの働きがあり、このアセチルコリンが、認知症予防にとっても重要なのです。

コリンは記憶力に関係する

 

アセチルコリンは、神経の信号をリレーのバトンのように伝えていく神経伝達物質で、特に記憶力に関係しています。アルツハイマー病は、コリンをアセチルコリンに変える酵素が少なくなっているので、アセチルコリンが著しく不足していることがわかってきています。認知症になると新しいことが覚えられなくなるのは、このアセチルコリン不足が大きな理由の一つです。アリセプトなどの抗認知症の薬の多くは、アセチルコリンを分解する酵素の働きを抑えて、脳内のアセチルコリンの量を増やし、記憶力の改善や維持を行っています。材料が足りなければ、アセチルコリンは作ることは出来ないのです。


コリンは、たんぱく質から合成されるため、肉、卵、大豆製品などに豊富に含まれています。高齢者は、加齢にともなって、体内のアセチルコリンの量が減少しているので、十分にたんぱく質の摂取しなければなりません。しかし、残念ながら、一度認知症になってしまうと、コリンを摂取しても効果は発揮されないという研究が多いことから、早期から気をつけて摂取し、認知機能の維持に努めることが大切です。大豆や赤身肉などの食品にはコリンが多く含まれ、認知症予防に役立つビタミンB群や鉄などの栄養素も豊富に含まれています。但し、牛肉は脂質の問題があり、血液をドロドロにし、脂肪細胞が付きやすくするので、肥満や、動脈硬化などの問題のある人は、魚類や豆類からコリンを補給しましょう。

食べ方のポイントは?

ご飯や、パンなどの主食を少なくして、おかずを多めにすることで糖化を防ぐことが出来ます。肉や、卵、大豆製品を食べるとお腹にガスがたまりやすくなり、下痢や便秘になりやすい人は、消化しやすいように、食材を細く切ったり、スープにするなど調理法を工夫しましょう。

【コリンを多く含む食品】
赤身肉・レバー・サケ・卵(卵黄)、大豆製品、乳製品、ピーナッツなど

主食やお菓子、果物は控えめにすることが大切

砂糖を含む甘いお菓子や飲み物は基本的に摂らないようにしましょう。小腹が空いたときには、甘いお菓子ではなく、ゆで卵、ナッツ、チーズ、納豆などを食べるようにすると、
たんぱく質を摂りながら空腹感がやわらぎます。ほんの少しスイーツが食べたいときには、ココナッツの果肉から作られている「ココナッッバター」がおすすめです。そのまま
食べてもほんのりとした甘みもありますし、ココナッツオイルより食物繊維が豊富なので、腸内環境を整えてくれます。

「果物は体に良い」と思っている方も多いと思いますが、果物はビタミンやミネラルが豊富である一方で、糖質がたくさん含まれています。また、「朝はバナナを必ず食べる」という方も、実は、バナナは、栄養価が高い一方で、糖質が高い果物なのです。果物を食べるなら、朝食後に少量食べるようにしましょう。また、少しずつ食べることで血糖値の急上昇を防ぎます。

糖質を控えるメリット
①糖化を防ぐこと。
糖化を抑えることでビタミンBを節約できます。糖質をたくさん摂ると、代謝にビタミンBが使われてしまいます。
糖質は、1食あたり、20~40g。ご飯ならお茶碗半分。食パンは6枚切り半分。パスタも半分くらいが目安です。
朝昼晩のうち、夕食だけ糖質(主食)を抜く方法でも構いません。夕食で糖質を抜くと、その後の睡眠の質が上がるというメリットもあります。また、食べる順序も大事です。
先に汁物や野菜などの食物繊維をとって、次に肉や魚などのおかずでたんぱく質を摂り、最後に主食を食べるようにしましょう。おかずを食べたら、主食はおまけ程度にと考えましょう。 まずはおかずでお腹をいっぱいにし、物足りなかったら、主食を少し食べるというのが理想です。また、ココナッツオイルを起床後の空腹時にコーヒーや紅茶に混ぜて飲むのがおすすめです。1日にとる量は一度に大さじ2杯です。分けて摂らずに一度に摂ることが大事です。

「ボケない人の最強の食事術」(青春出版社 /今野裕之 著)引用

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