老化を促進する要因には、「酸化」もあります。
酸化とは、物質が酸素がくっついて化合物となることを言います。
私たちの身近なところで言えば、鉄のクギをしばらく置いておくと赤くサビたり、また、リンゴを切って、
時間が経つと切り口が茶色に変色するという現象が酸化です。
糖化が「コゲ」ならば、酸化は「サビ」。実は、私たちも、酸化して体がサビついているのです。
私たちは、呼吸によって酸素を取り込み、食物に含まれている栄養素を使って、活動エネルギーを作っています。
そして、そのエネルギーを生み出しているのが「ミトコンドリア」です。
ミトコンドリアは生きるために必要なエネルギーを作る工場に例えられますが、その時に工場から出てくる
有害な排水や排煙のようなものが「活性酸素」だと聞けば理解できます。
ミトコンドリアから発生する酸素分子は、電子的に不安定で、原子から電子を奪い取って、安定させようとしますが、
今度は、逆に電子を取られた物質が不安定になり、原子から電子を取って、物質の性質を変えてしまいます。
活性酸素は、酸化力が強く、細胞の中を傷付け、タンパク質やDNA、脂質などの生体成分をサビ付かせます。
そして、性質をどんどん変えてしまうので、それが、老化や病気の原因につながっていくのです。
活性酸素が関与している疾患として考えられるのは、高血圧、白内障、アトピー性皮膚炎、糖尿病、心筋梗塞、
脳梗塞、胃潰瘍、がんなどですが、アルツハイマー病、パーキンソン病なども同様です。
代表的な活性酸素とは
体内で生成される活性酸素の代表的なものには、「スーパーオキシド」「一重項酸素」「過酸化水素」
「ヒドロキシラジカル」の4種類があります。
①スーパーオキシドラジカル(O2–)
タンパク質・糖質(炭水化物)・脂質をエネルギーに変える時に発生する、最も一般的な大量発生しやすい活性酸素です。
細胞の損傷や破壊を促し、他の活性酸素の前駆体となります。
②過酸化水素(H2O2)
スーパーオキシドが反応し、常に発生しています。寿命が長く、生体膜を容易に通過するので、
脂肪酸、生体膜、DNAを損傷させます。そして、ヒドロキシラジカルに変化します。
③ヒドロキシラジカル(HO・)
スーパーオキシドから生じた過酸化水素が、反応して発生します。活性酸素の中では最も酸化力や反応性が強いと言われ、
ガンなどの生活習慣病になる可能性が高くなります。
非常に強い酸化力を持ち、紫外線などの光の刺激により、皮膚や目に発生し、シミやシワを作ります。
皮膚を形成しているタンパク質や脂肪を酸化させ、変化させます。

「タンパク質」などの抗酸化物質が作られています。
それを「スカベンジャー」と言い、その働きを「抗酸化力」と言います。
抗酸化物質には、
①活性酸素の発生を抑制させる。
②活性酸素の酸化力を抑える。
③活性酸素によるダメージを修復する。
という働きがあり、活性酸素の酸化力をなくすために、不安定な状態にある分子に電子を与えて、
分子の構成を変え、細胞を守ります。
抗酸化作用のある体内酵素とは
活性酸素を除去する抗酸化作用のある体内酵素には、「スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)」
「カタラーゼ」「グルタチオンペルオキシダーゼ」の3つがあります。
①「スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)」スーパーオキシドを除去
SODは、タンパク質から出来ており、スーパーオキシドを除去する力を持った酵素です。
活性酸素を発生させているミトコンドリア内で作られ、ミトコンドリアや細胞質に存在します。
スーパーオキサイドを過酸化水素と酸素分子に分解します。マンガン、銅、亜鉛が補助酵素になります。
②「カタラーゼ」過酸化水素を分解
カタラーゼは、細胞内で作られ、肝臓、腎臓、赤血球に多く存在し、過酸化水素を酸素分子と水に分解します。
セレンが補酵素となります。
③「グルタチオンペルオキシダーゼ」過酸化水素や過酸化脂質を分解
グルタチオンペルオキシダーゼは、グルタチオンを必要とします。細胞内で作られ、過酸化水素や過酸化脂質を
分解し、過酸化水素による赤血球のヘモグロビンや細胞膜の酸化を防ぎます。補酵素はヘム鉄になります。
抗酸化ビタミンとは
代表的な抗酸化ビタミンとして、「ビタミンA」「ビタミンC」「ビタミンE」があります。
①「ビタミンA」
ビタミンAとは、レチノール、レチナール、レチノイン酸の総称で、脂溶性ビタミンに分類されます。
また、β-カロテンは、摂取すると、体内でレチノール=ビタミンAに変換されるため、ビタミンAの仲間に
分類されます。β-カロテンには活性酸素の発生を抑え、取り除く働きがあります。生のままでは吸収されにくいため、
油と一緒に摂ることで吸収率が高まります。脂溶性ビタミンのため肝臓に蓄積されます。
②「ビタミンC」
ビタミンC(アスコルビン酸)は、水溶性のため、多量にとっても尿から排泄されてしまいます。
また体内では作られないので、毎日、摂取することが必要です。抗酸化力が非常に強く、活性酸素から細胞や
組織を守ります。また、ストレスへの抵抗力を高め、鉄の吸収も良くします。ビタミンCには、体内で発生する
活性酸素と結びついて、無力化してしまうビタミンEを再生させるという働きがあります。
③「ビタミンE」
ビタミンEは脂溶性ビタミンで、強い抗酸化作用を持っています。天然にはα-、β-、γ-、δ-トコフェロールと、
α-、β-、γ-、δ-トコトリエノールの8種類があります。その中でも、生理作用が最も強いものが
α-トコフェロールで、体内にあるビタミンEの90%を占めています。
細胞膜の脂質にはリン脂質として「不飽和脂肪酸」が多く含まれていますが、酸化されやすく、
活性酸素と反応すると過酸化脂質が発生します。過酸化脂質は、細胞を傷つけて老化させ、様々な病気を
引き起こす原因になります。ビタミンEは、細胞膜の中に存在して、自らが活性酸素と結びついて、
過酸化脂質の発生を抑えます。
代表的な抗酸化物質について
①「カロテノイド」 スーパーオキシドや一重項酸素を無毒化
・βーカロテン(ニンジン)、リコピン(トマト)、ルテイン(緑黄色野菜、ブルーベリー)、
アスタキサンチン(えび、かに、さけ・ます)、α-カロテン(人参やカボチャなど黄色やオレンジの野菜)、
β-クリプトキサンチン(温州みかん、柿)
②「ポリフェノール」 スーパーオキシドや一重項酸素を無毒化
・タンニン(赤ワイン、緑茶)、カテキン(緑茶)、ルチン(そば)、アントシアニン(ブルーベリー)、
イソフラボン(大豆)、サポニン(大豆)、カカオポリフェノール(ココア、チョコレート)
クルクミン(ウコン)、セサミノール(ごま)、セサミン(ごま)、フェルラ酸(米ぬか)
ショウガオール(ショウガ)、コーヒーポリフェノール(クロロゲン酸)(コーヒー)、
テアフラビン(発酵茶・・紅茶、烏龍茶)
③イオウ化合物 ヒドロキシラジカルを除去
・アリシン(にんにく)、イソアリシン(ネギ類)
④コエンザイムQ10 活性酸素を抑える
コエンザイムQ10(coq10)は、コエンザイムというのは日本語で「補酵素」を意味します。
ビタミンと似た働きを持っているので、ビタミンQともいわれますが、体内で合成されるのでビタミンでは
ありません。脂溶性でミトコンドリア内に多く含まれていて、エネルギー生産に重要な働きをしています。
CoQ10には酸化型と還元型の2つがありますが、体内に取り込まれると酸化型から還元型へと変化します。
強い抗酸化作用を持ち、活性酸素を抑えるのは還元型です。また、体内で発生する活性酸素と結びついて、
無力化してしまうビタミンEを再生させる働きがあります。
・いわし、サバ、牛肉、豚肉

良くない油や、また食品添加物の多い加工食品の摂り過ぎなどが原因で、酸化しやすい食生活になり、
飲酒や喫煙、排気ガスや紫外線などの危険が生じる生活を送っていると、活性酸素の生成量がどんどん増えて、
対処できなくなってしまいます。
細胞内での抗酸化酵素の活性が不十分で、活性酸素が分解されなかった場合、処理できなかった活性酸素が
ミトコンドリアのDNAに傷をつけ、老化の症状を引き起こしてしまうので、その結果、がん、動脈硬化、
脳の変性疾患など様々な疾病に繋がっていきます。
抗酸化物質をしっかりと摂って、体をさび付かせない生活をしていくことが大切です。
また、活性酸素を増やさないように意識していきましょう。

「ボケない人の最強の食事術」(青春出版社/今野裕之 著)参照