認知症とは

「もしも、親や身近な人、あるいは自分自身が認知症になってしまったらどうしよう…」
認知症になる可能性は誰にでもあり、とても他人ごとではありません。最初に症状に気づき、誰より一番不安になって苦しむのは本人です。それを見ている家族 の思いも悲痛なものがあります。我が国では高齢化の進展とともに、認知症の人数も増加し、65歳以上の高齢者では平成22年度の時点で、7人に1人程度と されています。また、認知症の前段階と考えられている正常と認知症の中間ともいえる状態で、日常生活への影響はほとんどなく、認知症とは診断できない人 が、年間で10~15%が認知症に移行するとされています。年齢を重ねるほど発症する可能性が高まり、今後も認知症の人は増え続けると予想されています。

また、認知症は高齢者に多い病気ですが、「若年性認知症」は、働き盛りの年代で発症し、厚生労働省によると(※)全国における若年性認知症の有病者数は約3万8千人おり、そのうち50歳以上が8割超を占めるとされています。
今では、認知症の大部分は、普段からの生活管理が認知症の予防につながることが分かってきました。また、症状が軽いうちに認知症であることに気づき、適切 な治療が受けられれば、認知症の進行を遅らせたり、場合によっては症状を改善したりすることもできるとも言われています。日本デトックス㈱では、認知症の予防、認知症のケア、介護家族のために、「あなたの困ったを良かったにしたいというモットーのもと、少しでも、認知症の予防に努め、患者やご家族の方の体と心の負担と不安が軽減できるようにサポートして行きたいと思っています。
1. そもそも認知症とは
脳は、人間の活動及び思考、記憶をコントロールする司令塔です。それがうまく働かなければ、精神活動も身体活動もスムーズに運ばなくなります。
認知症とは、いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったためにさまざまな障害が起こり、記憶・判断力の障害など、社会生活や対人関係に支障が出ている状態のことを指します。
2. 認知症になると出てくる症状
認知症によって必ず表れる記憶障害を中心とした中核症状と、本人の性格や環境の変化などが関係して、人によって出たり出なかったりする周辺症状があります。
中核症状
中核症状とは、脳の神経細胞の破壊によって起こる症状です。
記憶障害
- 直前の事を忘れる
- 同じことを何回も言う
- 忘れ物を何回もする
見当識障害
- 今がいつなのか(時間・季節の感覚がなくなる)
- 今どこにいるのか(道順の感覚がなくなる)
判断力の低下
- 着る服を選べなくなる
- 考えるスピードが遅い
実行機能障害
- 計画を立てて実行できない
- 目的達成の判断ができない
周辺症状
周辺症状はその人の性格や環境、人間関係などが絡み合って起きるものです。そのため、症状は人それぞれ異なり、また接する人や日時によっても大きく変わってきます。
- 幻覚
- 妄想
- 攻撃的行動
- 睡眠障害
- 徘徊 などの精神症状
- 抑うつ状態
- 依存
- 不安感
- 無気力といった感情障害
3. 認知症の種類
- アルツハイマー型認知症
- 脳血管型認知症
- レビー小体型認知症
- 前頭側頭型認知症
認知症で最も多いものは、変性性認知症の代表である「アルツハイマー型認知症」で、全体の約60%を占めています。次いで「脳血管性認知症」と「レビー小体型認知症」が約15%ずつで、これらは三大認知症と呼ばれています。また、その他の認知症については、まとめて10%弱です。
[参考]厚生労働省「認知症予防・支援マニュアル(改訂版)」アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も有名な病気ですが原因は不明です。
脳に、茶色いシミのようなもの(老人斑)が多く確認されていますが、これは「アミロイドβ」という異常なタンパク質が沈着したもので、比較的早い段階からこの沈着が見られるのが特徴です。そして、老人斑以外にも変化した神経線維の束が見られるようになり、これらが脳全体にどんどんと蓄積し、正常な脳神経細胞が活動できなくなり、脳の神経細胞が急激に減少します。脳の委縮によって、知能の低下や人格の崩壊が起こり、やがては、知能だけでなく身体全体の機能が衰え、そして、二次性の合併症である呼吸器合併症などの疾病によって、最終的に死に至るということもあります。
アルツハイマー型の特徴(症状など)
初期 期間2~6年間
物の置き忘れやしまい忘れなどの記憶障害から始まる。そして、同時に感情、意欲、性格といった精神面にも変化がみられる中、日常生活では、それほど支障が出ないので、話しをしていても普通と変わらないので、気付けないことも多い。食べた夕食の内容を忘れているのではなく、先ほど夕食を食べたことを忘れてしまうといった症状が見られる。
中期 期間2~3年間
- 段々と現在と過去の区別がつかなくなる。過去の記憶は比較的覚えているが、最近のことの記憶はない。徘徊症状が起こる。
- 尿意や便意が分からず、失禁することが多い。
後期
- 脳萎縮の進行により、言葉の数も意味も分からなくなり、やがては話が通じなくなる。
- 食事に介助が必要になり、歩行姿勢が前倒になったり、左右どちらかに傾く。
- 寝たきりになり、上下肢の関節が拘縮、嚥下障害も出て栄養不良と誤嚥性肺炎が起こりやすくなる。
脳血管性認知症
脳血管性認知症は、脳梗塞(脳の血管に血栓という血の固まりがつまった状態)や脳出血(脳の血管が破れて出血した状態)といった、脳の血管に異常が起きた結果、認知症になるものを言います。その脳血管性認知症には、突然の脳血管障害をきっかけに急激に認知症が発症する場合と、小さな脳梗塞を繰り返して起こしているうちに徐々に認知障害が現れる場合があります。どちらの場合も、症状は段階的に悪化していきます。
脳の血管のどこの部位に障害が起こっているかによって症状が異なります。わかることとわからないことが、同時にバラバラに現れることがあります。
脳血管性認知症は、”生活習慣病” が原因と言われているため、高血圧・高脂血症・糖尿病などにならないことが、脳血管性認知症の予防に繋がります。生活習慣の改善が重要です。
脳血管性認知症の特徴(症状など)
初期の症状
- 意欲低下や自発性低下、夜間の不眠や不穏が目立つ。
- 影響を受ける脳の部位が限られており、できることとできないことがはっきりしていることが特徴。
- 非常に小さな脳梗塞や脳出血が起こった場合は、自覚症状がない場合や、感じてもふらつきやめまい程度であまり気がつかないこともある。
中期以降の症状
- 発作が起こる度に症状が段階的に重くなる。
- ダメージを受けた脳の部位によって出る認知症の症状が異なるので、「まだら認知症」がみられるのも特徴。
- 認知症の症状も日によって大きく変わる。
レビー小体型認知症
脳の中に「レビー小体」という円形の物質が多くみられるのが特徴です。
レビー小体とは神経細胞の中にあらわれるもので、「α-シヌクレイン」という特殊なたんぱく質からなります。レビー小体が大脳皮質に広くあらわれ、もの忘れなど認知症の症状が発生し、脳のもっと下の脳幹部分にあらわれると、ふるえがおこったり、歩きにくくなるという症状が現れます。神経細胞内に形成され、大脳から脳幹へと次第に広がり蓄積します。
レビー小体型の特徴(症状など)
初期から中期にかけては記憶障害が目立たない場合も多くアルツハイマー型認知症のような一般的な認知症だとは認識されにくい。
- 注意力の低下
- 視覚認知の障害
- 記憶障害などの認知機能障害
- 幻視(実際には見えないものが見える~人物、虫や動物が動きまわるなど)
- 症状の変動が大きい
- パーキンソン症状(歩きにくい、転びやすい、動きが遅い、手が不器用など)
- 薬の副作用が出やすい
- 大声での寝言や行動化(レム睡眠行動障害)
前頭側頭型認知症
前頭葉と側頭葉に萎縮が起こるために発症します。その中で代表的な病気がピック病です。特徴としては、人格変化や言語障害が目立ちます。
原因として、人格を操る前頭葉に障害が起こるために、抑制や感情のコントロールができない自己中心的な人格に変わったり、短絡的な行動やだらしない行動が目立ち、反社会的な人に変貌することも現れてきます。その他にも、言語障害が見られることもあります。
アルツハイマー型認知症よりも、やや若年の初老期に発症する傾向があります。
前頭側頭型認知症の特徴(症状など)
- 初老期に発症する傾向
- 人格や性格が変わる(感情のコントロールができなくなる、自己中心的な性格に変わる)
- 清潔保持や衛生面が管理できない
- 反社会的・反道徳的な行動をとる(わざと約束を破るなど)
- 食事の好みの変化や偏食がみられる
- 言語障害(言葉が段々でなくなることもある)
- 少しずつもの忘れの症状も出てくる(物の名前の意味する事がわからなくなる)
4. 軽度認知障害(MCI)とは?
健常者と認知症の人の間には、グレーゾーンにあたるMCI(Mild Cognitive Impairment:軽度認知障害)があります。
「認知症とは言えないけれど、正常でもない状態」のことを言い、もの忘れは本人が自覚するだけでなく、家族など周囲の人が「以前より忘れっぽくなった」と指摘する程度のものです
MCI5つの定義として
- 記憶障害の訴えが本人または家族から認められている
- 日常生活動作は正常
- 全般的認知機能は正常
- 年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害が存在する
- 認知症ではない
全部当てはまると軽度認知障害(MCI)と考えられます。
MCIの原因を放置していると、認知機能の低下が続き、5年間で約50%の人は認知症へと進行すると言われています。
厚生労働省は、認知症とその予備軍とされるMCI人口は862万人存在すると発表しています。驚くべきことにこれは65歳以上の4人に1人です。認知症やMCIはとても身近な症状といえます。
軽度認知障害(MCI)には、「健忘型」と「非健忘型」と2つのタイプに分かれ、「健忘型」は記憶障害がみられ、「非健忘型」は、記憶障害ではなく、失語や失行などの症状が多く見られます。
軽度認知症害(MCI)の多くは「健忘型」で、アルツハイマー病に進行することが多く、「非健忘型」は、前頭側頭型認知症やレビー小体型認知症に進行することが多いと言われています。
早期発見の重要性
現在、治療や薬や様々な療法により、認知症の進行を遅らせることはできても、完治することはできません。だからこそ、早い段階での予防と適切な治療を行うことで症状の進行を阻止することが出来ます。早期発見が大切です。