現代人にとって、がんは最も恐るべき病気です。がんの原因の多くは、生活環境の中にある発がん物質であることは、すでによく知られています。特に日常的に体内に摂取される食品と重要な関係があるということが、世界中の研究家から指摘されています。
これまで、日常の食品から次々と発がん物質が発見され、大きな社会不安となってきました。特に食品添加物の殺虫剤AF-2とカビ毒のアフラトキシン、魚などの焼け焦げから取り出されるトリプP-1やグルP-1などの発がん物質が指摘されています。
この毒物を唾液と反応させると、その毒物はどう変化するかという実験が行われました。
毒性の目印は、発がん性と密接な関係にある変異原性です。変異原性とは、細胞の遺伝子DNAを損傷して、突然変異を起こさせる性質があります。その結果、発がん物質の毒性に対して、唾液は、相当の毒消し力を示すことが判明しました。
唾液の毒消しのメカニズムには、酵素反応が絡んでいるということが推定されました。
唾液には、消化酵素など多くの酵素が含まれていますが、カタラーゼ、SOD、ペルオキシターゼなどは“活性酸素を消去する酵素”であるということがわかりました。
活性酸素には、O₂、H₂O₂、O Hなどがありますが、その他に過酸化脂質などもその一種で、私たちの生体内で常に少しずつ出来ているのです。でも、少しの活性酸素なら私たちの体には、これを消す働きが十分備わっています。それが、カタラーゼ、SOD、ペルオキシターゼなどの酵素です。
何かのきっかけで、突然大量の活性酸素が発生することがあります。そのきっかけが、発がん性物質などの毒物です。活性酸素が細胞に大量に出ると遺伝子などの生体の重要な分子を傷付け、その結果、ガンや老化の原因になります。『よく噛むこと』によって、唾液の消去酵素が、食べ物に含まれる有害物質を出す活性酸素を毒消ししてくれることになるのです。
しかし、人によっては、毒消し力が違うということもわかりました。強い人と弱い人がいるのです。野菜や果物などの食材について調べましたが、ゴボウやレンコンといった食材が強い働きを示しました。母乳と粉ミルクを調べてみると、粉ミルクには全く、毒消し力は有りませんでした。
活性酸素を発生させないためには、活性酸素を入れないこと。西岡仮説によると、人工的なものは、活性酸素を出し、自然なものは、それを消すとされています。
唾液の毒消し力を活用するには、よく噛むこと。1口食べたら30回噛む。
活性酸素を毒消しするのに30秒かかり、1秒に1回噛むとすれば30回噛むということです。
現代では、噛みごたえのない白米、やわらかく作られた加工品などが常食になることで、よく噛むことが少なくなりました。噛むことを意識して食事をするようにしましょう。
参照:「噛む効用」~唾液の驚くべき力 西岡 一 著