人の脳には、1千億個の脳神経細胞があると言われていますが、20歳を過ぎると、1日に10万個ずつ減っていき、歳をとればとるほど、脳は委縮する一方で、新たに、増え続けることはないとされていました。
ところが最近の研究では、脳細胞は新しく新生されることが証明されました。脳神経細胞の新生が認められたのは、海馬という記憶を司る部位です。海馬というのは、新しく記憶する場所です。そこを大量の情報にさらすと、たくさんの神経細胞が興奮し、海馬の中で眠っていた細胞が分裂し、新しい細胞が生まれることが認められたというのです。
さらに高齢者に、1日40分のウォーキングを週に3回、半年間、続けてもらったところ、今度はなんと、脳の体積が増えたと言います。具体的には、BDNFという脳内物質が増えたことによります。
※BDNFは「脳由来神経栄養因子」と呼ばれ、神経細胞の生存・成長・シナプスの機能亢進などの神経細胞の成長を調節する脳細胞の増加には不可欠な神経系の液性蛋白質です。
BDNFは神経の「栄養」のようなもので、 新しい神経を作ったり、神経を発達・成長・増殖させたり、 また、神経と神経をつなげたり、 神経をダメージから保護する働きを持つと考えられています。BDNFは脳や神経以外にも存在するタンパク質ですが、脳や神経への作用が注目されています。
具体的には、BDNFは、運動によって増加し、神経細胞から繊維が伸びたのです。この場合の運動は、激しいものではなく、ウォーキング程度で十分です。何より楽しんで継続することが重要です。
また、長寿健康高齢者の脳を調べた研究からは、長寿健康高齢者では、脳の前頭前野の一番前の部分の委縮が少ないことが明らかになっています。
脳のこの部位は、高度の知的活動を司る領域ですので、この部位の委縮を避けるためには、個人の能力を少し上回る程度の学習をすることが重要だと言えるでしょう。
計算ドリル、クイズ、オセロ、クロスワードパズルなども、脳の機能の低下を防ぐ脳トレとして流行しています。
高齢者になっても分裂する脳細胞は、一般の成熟した脳細胞ではなく、脳にある神経幹細胞(いろいろな神経細胞に分裂することが出来る、おおもとの細胞のこと)で、これが分裂して増殖する、さらに、この細胞は海馬周辺に多く存在することが知られているのです。
さて、基本的なことですが、栄養不足は脳の機能を低下させます。高齢者に不足しがちなビタミンB12は脳のビタミンとも呼ばれ、脳神経線維同士の連絡部分である「シナプス」を修復する作用や、脳の血流を良くする作用が有ります。また、葉酸は、ホモシスティンというアミノ酸を正常に保つことで、アルツハイマー発症のリスクを低下させるという報告があります。脳に必要な栄養素は数多くありますが、まずはビタミンB群からしっかりと摂るように心掛けましょう。
参考:「人より20歳若く見えて、20年長く生きる 」
澤登 雅一 著

