高齢者の音楽療法に求められる嚥下と口腔内環境の改善
Ⅰ)高齢者を取り巻く環境
1)誤嚥下性肺炎について
嚥下は、食物を認識して口に取り込むことに始まり、胃に至るまでの一連の過程を指します。
誤嚥とは、食べ物や異物を気管内に飲み込んでしまうこと。また異物を消化管内に飲み込んでしまうことを言いますが、要介護者の死因のトップは、誤嚥による肺炎です。
これは高齢者において、特に、喉周辺の筋肉や嚥下中枢(延髄)の機能が衰えたために起こりやすくなります。嚥下しやすい機能性食品(病院食と普通食の間を埋める位置づけの食品)の開発も進められてはいますが、まだまだ不十分と言えます。
Ⅱ)音楽療法でできること
- 音楽療法とは、
日本音楽療法学会(2001)での定義では、音楽のもつ生理的、心理的、社会的働きを用いて、心身の障害の回復、機能の維持改善、生活の質の向上、行動の変容などに向けて、音楽を意図的、計画的に使用することとされており、現在では多くの病院や施設に導入されています。
2)口腔ケア、誤嚥下予防のための音楽療法
音楽には発音、発声、咀嚼、嚥下などの口腔機能を促進する働きがあります。
特に、能動的音楽療法(歌を唄う、楽器を演奏する)には、舌、頬、のど、顎、頸部の筋肉を動かすことに通じますので、摂食・嚥下に関与する咽頭部の筋肉活動を改善し、よって誤嚥下性肺炎を予防する効果が期待できます。
≪嚥下と能動的音楽療法≫
舌、舌骨、下顎(下あご)に付着する筋肉を鍛えること(靱帯を介して喉頭蓋を動かすために意味がある)
歌を唄う
↓
舌や下あごを動かす
↓
舌根部の機能が活性化する
↓
喉頭蓋が喉頭口に覆い被さる
さる機能が活性化する
しかし、施設に入ってらっしゃる高齢者の方や、他の疾病等によって、必ずしも歌を唄う、楽器を演奏するなどの行為ができない方もいらっしゃいます。そこで、注目されているのは、受動的音楽療法です。これは、音楽を聴覚情報として聴くことにより、心身の障害の回復、機能の維持改善を図る方法で、ある種のクラシックなどの楽曲を聴き、副交感神経を刺激することにより、唾液がよく分泌され、加えてリンパ球に依存する免疫力が高まるために、誤嚥性肺炎を防止できるというものです。
Ⅲ)受動的音楽療法による高齢者の嚥下と口腔内環境の改善
高齢者の方に良いとされている音楽の特徴として、埼玉医科大学の和合治久教授は、
(1)旋律について
・明るく純粋・透明感のある曲
・元気が出そうな活動的な曲
・静かさ、優しさに満ちたゆったりした曲
・シンプルで繰り返しの多い曲
(2)選曲に当たって着目する点
・季節や行事に関係する曲
・よく好まれて歌われた曲
・心が落ち着く穏やかな曲
・心が洗われる優しい曲
などの特徴を上げておられます。
特にモーツアルト曲や528Hz曲は、生体機能への影響が顕著に表れています。
(モーツアルトの曲を聴き入る(30分)のデータ)
- 唾液分泌量、唾液IgAへの影響
≪唾液量の変化≫
⇒加齢とともに唾液量は、減少する傾向があります。これにより、食べたものが、喉につかえるなどの障害が起きやすくなります。音楽療法により、唾液量が増えるので誤嚥などのリスクを軽減します。
≪唾液IgAの変化≫
⇒IgA抗体は唾液のみならず消化液あるいは涙や母乳などに分泌される抗体という免疫物質です。音楽療法により、身体の分泌液中の免疫物質が増加すると考えられ、体表面の免疫力が向上すると思われます。また口腔内の免疫力の向上につながりました。
- 唾液コルチゾールへの影響
⇒コルチゾールは副腎皮質から分泌されるホルモンであり、ストレスによって増えるので、ストレスホルモンとも呼ばれています。音楽療法により、ストレス度は減少する傾向があります。
- c) 唾液アミラーゼへの影響
⇒唾液アミラーゼは、デンプンなどの炭水化物を麦芽糖に分解する消化酵素であるので、この音楽に聴き入ることで、ごはんはより早く麦芽糖に分解されて、胃に送られることになります。そして、その後にすい臓から分泌されるマルターゼによってブドウ糖まで分解されて吸収され、エネルギー源になっていきます。音楽療法により、唾液中のアミラーゼが増加しました。この結果、食事前に聴き入ると消化機能は高まります。
- d) 末梢血中の免疫細胞機能(好中球、NK細胞、リンパ球)への影響
≪CD16CD56陽性NK細胞の(FACS解析)
⇒NK細胞は、大型顆粒リンパ球として存在しています。 非特異的にウイルス感染細胞や癌細胞を攻撃します。このNK細胞を音楽療法により増加させることができます。
- e) 生活習慣病への影響(例:血圧、インスリンへの影響)
≪血圧の変化≫
⇒音楽療法を施すと、運動負荷後にもすばやく血圧が低下し、安定化します。
≪唾液中のインスリンの変化≫
⇒すい臓のランゲルハンス島から分泌されるインスリンは、血糖値を減少させる
ホルモンです。音楽療法を施すと脳神経学的には、延髄にある糖中枢を経由して、
すい臓に分布する迷走神経という副交感神経が刺激されたと考えら、膵臓機能を亢進
します。これにより膵臓機能が亢進し、糖尿病の予防につながると考えられます。
- g) 体温への影響
⇒健康を維持してくれる免疫力は、体温が1度下がるだけで30%低下します。
音楽療法を施すと体温が上昇します。特筆すべきことは、体の末梢まで暖かくなり、
冷えによる様々な疾病を防ぐことができると考えられます。
Ⅳ)受動的音楽療法のモーツァルト音源
どんな音楽でも音楽療法になるわけではありません。また療法として効果がある音楽と気持ちが良い音楽や
リラクゼーション音楽とも違います。
≪音楽療法用のモーツアルト音源≫
モーツァルトの楽曲は、多くの研究がなされ、体温が上がり、唾液の量が増え、血圧や心拍数が安定するという結果が出ています。
さらにリンパ球が増えることもわかってきました。
この『モーツァルト』に鳥の鳴き声や水のせせらぎ、海の波音などを組み合わせたのが、『自然の中のモーツァルト』です。これら自然の音は、1/fの揺らぎを持ち、可聴音域以上の音、特に音楽療法のひとつの要素である高周波層の音まで含まれています。
この音楽療法用のモーツアルト音源の「自然の中のモーツァルト」は、原曲に自然音(海の波の音)がアレンジされ、原曲にはない20Khzの周波数の音まで含まれています。
この波の音は、曲の雰囲気を壊すことなく、心地良いまでの楽曲になっており、音楽療法の音としては、理想的な仕上がりになっています。
「自然の中のモーツアルト」は、4枚組のCDセットです。
まるで、自然の中にオーケストラを呼び、そこでコンサートを聴いているような音楽になっています。
例えば、小鳥たちは、まるで楽曲の中の重要な楽器であるかのようにさえずります。暖かな日差しすら感じることでしょう。
(㈱シグマインターナショナル 幡垣 真也 代表 資料より)











