昨年 9月7日に、父が脳腫瘍の手術を受けました。

『前頭蓋底骨髄腫』。脳を包む髄膜から発生する腫瘍で、前頭部の奥にある前頭蓋底部にできる腫瘍です。
良性の腫瘍とはいえ、かなり大きくなっており、奥の視神経にまで絡み付いていたのだそうです。
良性の腫瘍とはいえ、かなり大きくなっており、奥の視神経にまで絡み付いていたのだそうです。

腫瘍を無事に全摘出していただき、腫瘍によって欠損した前頭蓋底骨の再建手術も行われました。

手術の成功に安堵したものの、ベッドの上で身体を動かせない状況が続くと、どれだけの身体機能が低下するか・・・怖い。
入院した翌日には、母のことがわからなくなりました。まだ、手術をする前なのに、あっという間に、そうなってしまうのかと、ちょっとショック。
安静が長期間続き、活動性が低下することで、身体に様々な状態が起きてくる症状を「廃用症候群」と言うのだそうです。
急な環境の変化や不安で、心身に大きなストレスがかかり、認知機能が低下する。もう? これが現実なんだー。
また、術後せん妄については、入院前から説明を聴いていました。手術によって身体機能だけでなく、精神機能も低下するため、覚醒レベルが変動し混乱状態として現れてくる症状を言います。
せん妄状態になると、なぜベッドにいなければならないのか理解することが難しくなり、カテーテルがつながったまま歩き回ろうとしたり、抜こうとしたりという行動を起こします。自分の置かれている時間や場所や、状況を認識できない状態が続くと、それによって興奮や妄想、不安や抑うつなどが起きてきたり、反対に傾眠傾向になることもあります。看護師さんからは、環境整備を整えるために、時計とカレンダー、家族の写真を用意して飾って下さいと言われました。
術後、同室の部屋のカーテンの内からは、医療機器のアラーム音、唸り声、叫び声も聞こえて来ます。父の様子は痛々しく、反応はあまりなく、話は出来ません。
術後2日目、看護師さんの呼びかけに反応し、ニコッとするようになったらしい。良かった。
術後3日目、喋ることが出来ました。

「あんた久しいなー、こんなところで会うとは思わんかった。」とかすれた声で絞り出すように私に言いました。私のことも忘れてしまったのか・・・。でも、懐かしいと思ったことはまだ救いなのかもしれない。と思うようにしました。
担当のドクターからは、「なぜ自分がここにいるのか、ここはどこなのか、病気のことも手術のことも、もちろん家族のことも、今はわからないと思う。」と言われました。
父はドクターや看護師さんが部屋に来ると笑顔になって、とても良い表情をしました。今はドクターと看護師さんのことしかわかりません。身内と思っているのか、小さな自分なりの社会を作っているようでした。

自分が誰で、どう生きてきたのか、わかるようになるのだろうか・・・。今の自分に戻って来れるのか。思い出してもらいたい。わずかの時間であっても、毎日、病院に通って父に話しかけて、寄り添っていきたい。
術後3日目には、ガーゼが外されました。傷跡が痛々しい。ホッチキスの数は31個ありました。

術後5日には、何となく、私のことが思い出せたような様子が見えました。
一つ山を越えたと思えた日でした。
まだまだ遠い、回復への道ですが、「慌てず、焦らず、ゆっくりと」で進んで行きたい。