腸内細菌(腸内フローラ)は人間の身体の中で最大の臓器?

腸内細菌(腸内フローラ)は人間の身体の中で最大の臓器?

 

腸内細菌は、1000種類以上あると言われており、人間の腸には合計で1000兆個もの膨大な腸内細菌が棲んでいます。その重さはすべてあわせると1.5㎏になります。

 

1.5㎏あるような臓器で他に何があるかというと、人間の身体の中で多分一番重いのは肝臓です。男性で大きな体格の方で1.5㎏くらい。脳でさえ1.5Kgもありません。腸内細菌(腸内フローラ)は人間の身体の中で最大の臓器と言っても過言ではありません。

 

肝臓や腎臓が悪くなるのと同じように、腸内細菌が悪くなるというだけで、どれだけ身体に負担(異常)がもたらされるかいうのは、重さで比べると何となく想像がつくかも知れません。

「細菌」というと目には見えない極めて小さな生き物と言うイメージですが、腸内細菌の総重量は(大腸と小腸をあせて)1.5㎏にもなるということは、これはもう最大の臓器であると言えますし、だからこれを良くするか悪くするかで人生が変わるというくらい重要です。

 

加齢に伴う腸内フローラの変化をみてみると、腸内フローラというのは、生まれた瞬間にはいなくて、自然分娩の場合は母体の産道の細菌が最初の腸内フローラになります。また、帝王切開の場合は、生まれた時の出産場所の周囲に棲息する細菌が最初の腸内フローラに影響を与える、ということが判っています。

 

誕生後、母乳によって一気に善玉菌(ビフィズス菌など)が増え、最初は95%くらい善玉菌で占められます。しかし、残念ながらそれが一生続くワケではなく、離乳と共に悪玉菌や日和菌が出て来ます。

そして、成人になるにつれ腸内フローラでは善玉菌よりも、日和見菌(バクテロイデスや嫌気性レンサ球菌など)や悪玉菌が増えはじめ、中年以降は右肩あがりで増えはじめます。これは、未病の人が増加する時期と一致しますが、老化に伴い高齢者の腸内フローラでは、大腸菌群とか腸菌群という悪玉菌がどんどん増えていきます。

 

悪玉菌が「ゼロ」なら良いかというと、決してそうではありません。悪玉菌も少なからず腸内で仕事をしており、たとえば、悪玉菌の代表である大腸菌は、栄養素をつくる役割をはたしているほか、O-157のような病原性大腸菌が腸内に定着しないような働きもあります。

悪玉菌にも役目や仕事はあり、大事なのは善玉菌とのバランスで、多くの善玉菌と少しの悪玉菌というバランスが理想的だと言えます。

 

だいたい善玉菌と悪玉菌が20%ずつくらい、あるいは、悪玉菌はもう少し少なくても良いと言われています。善玉菌が20%、悪玉菌が20%、日和見菌が60%くらいのバランスであればいいのですが、これまで実施した腸内細菌の検査では、善玉菌が20%ある方はほとんどいないというのが実情です。 『腸内』の研究は日々進歩しており、今聞いた話が明日にはもう古いということは、多々あります。

 

腸内細菌と動脈硬化の関係をみると、食品中に含まれるフォスファチジルコリンが、腸内細菌によりトリメチルアミンNに分解され、更に、トリメチルアミン-N-オキシドに代謝されます。トリメチルアミン-N-オキシドは粥状動脈硬化を進展させ、コリンは赤身の肉に多く含まれています。

 

これは、食品中に含まれるある成分が腸内細菌によって代謝されて、それが、いわゆるプラークを作るような動脈硬化を進展させる働きがあるということがわかってきています。

既に動脈硬化のある方は、赤身の肉の摂り方を考えた方がよいかもしれません。

 

腸内細菌と肥満の関係は、腸内細菌の乱れが短鎖脂肪酸を生成する細菌の減少することにより、

宿主のエネルギー吸収効率の変化がおき、脂肪蓄積が促進され、肥満となります。

肥満者ではファーミキューテス菌が多く、バクテロイデス菌が減少していました。

 

※人の腸内細菌の約90%は、バクテロイデスかファーミキューテスのどちらかに属していると言われ、肥満の人はやせている人よりもファーミキューテス菌が多く、バクテロイデス菌が少ないことが明らかになっています。また、バクテロイデス菌は、血中の脂肪が脂肪細胞に取り込まれるのを阻害し、脂肪を筋肉に取り込んで燃焼させる効果があることが確認されています。肥満も腸内細菌のバランスが関係しています。

 

善玉菌の数が少なくなると、短鎖脂肪酸という酪酸を生成する働きが減って来て、宿主(ヒト)のエネルギーの吸収効率が変化して脂肪の蓄積が進み肥満が起きることがわかっています。

腸内細菌の乱れは、糖尿病を起こし、ある種の腸内細菌がGLP-1の分泌を促し、インスリン分泌促進し、血糖が降下します。糖尿病も同じく言われているのが、ある種の腸内細菌がGLT-1と言う物質を分泌し、インスリンの分泌を促進するため、血糖値を下げる働きが強化されます。

しかし、糖尿病の人はその菌が少ないということもわかっています。

 

話題になった、腸内細菌移植(便移植)においては、健常者の正常な腸管細菌をそのまま患者の腸内に移植することで、腸内細菌バランスを正常に戻そうという治療法で、多くの腸疾患、便秘、肥満などに効果があることが示されています。 また、偽膜性腸炎の原因となるクロストリジウム・ディフィシル感染症に対しての、有効性が報告されています。日本では、慶應義塾大学のグループが、2015年の3月より難治性潰瘍性大腸炎や腸管ベーチェットなどに対する便移植の効果に関する臨床試験を開始しました。

 

では、腸内細菌をよくするにはどうしたら良いかということですが、近年話題になった便移植。
腸内細菌のバランスの良い人の便を、悪い人(患者)に移植する治療法です。

他人の糞便を移植するというので何となくイメージが悪いのですが、方法としては、大腸に内視鏡を挿入し、内視鏡の横の細い管から注射器で他人の糞便を噴霧して便移植は実施されています。

特に、クロストリジウムと言う偽膜性腸炎などの非常に厄介な腸炎を起すような感染症や、クローン病や潰瘍性大腸炎など、難病と言われている類の慢性大腸疾患に試されています。

また、便移植は、便秘や肥満にも良いと言うデータも出ています。

 

慶応の消化器系のグループがここ1~2年、難治性の潰瘍性大腸炎や腸管ベーチェットなどに対し、内視鏡で噴霧するやり方で便移植をはじめたのですが、既に、アメリカでは進んでおり、ベンチャーでは便をカプセルに入れ、経口で摂る方法を行っています。これをどう思うかというのは、問題のない人にしてみれば「イヤだな」というイメージを持つかも知れませんが、実際に難病を抱えている人にとって「それで治るんだったら…」ということを考えると、難病を持っている方にとっては、1つの新しい道が拓けたのかもしれません。便移植は既に、安全や効果についての論文発表があるものの、まだまだ臨床試験の段階です。とはいえ1つわかったのは、便移植を受けて太れたという報告が最近あったので、「変わる」というのは間違いないでしょう。

 

また、『腸内細菌の移植』というのも今後、もしかしたら一般的なアプローチになる可能性がある。

自分の腸内環境を知る方法としては、ひとつの検査項目でわかるものはありませんが、最近アメリカで身体の不調の原因としてかなり指摘され、注目されているのが遅発型フードアレルギーの問題です。

 

即時型と遅発型の違いは、例えば、食べ物のアレルギーで、蕎麦を食べたら亡くなったとか、給食を誤って食べて亡くなったというのは、『即時型フードアレルギー』のことで、食べたら5分~10分で症状が現れます。 かゆいとか蕁麻疹とか、酷い場合は呼吸困難になり、最悪の時にはアナフィラキシーショックを起してしまいます。たまご、蕎麦、小麦、甲殻類(えび・かに)、ピーナツなどで、子供に多いのが特徴です。命がけのことになってしまいます。IgEという免疫が関与しています。

 

一方、遅発型はIgGという免疫が関与していますが、免疫複合体といって、どちらかというとリウマチとか膠原病、自己免疫疾患と同じような病態を示します。 遅発型は食べてから数時間~数日後に、何となく不調とか、何となくお腹の調子が悪いとか、何となく肌の調子が悪いとか、だるいなどの症状で現れてきます。このアレルギーは卵や乳製品に多く、例えば、ヨーグルトを摂り続けると起こるという場合も少なくありません。

 

遅発型は、好物あるいは習慣的にいつも食べているものが原因になることが多いのが特徴で、子供も大人も関係なく起こります。遅発型は今のところ、保険診療のアレルギーとして調べられていませんが、実際にアトピーが良くならないとか、偏頭痛があるとか、下痢が続くとか、下痢と便秘を繰り返すなどの、お腹の症状、肌の症状、頭痛などの症状では、この検査をして陽生となったものを暫く避けることで症状の改善が得られることはかなりの高率でみられています。

 

即時型はすぐに症状が出るので原因がハッキリわかるのですが、遅発型はわからないので、だからこそ調べる必要があります。この遅発型アレルギーがあると腸の環境は間違いなく悪いと推測されます。

 

検査のやり方としては、少量の採血で可能です。しかし、国内には検査機関が無いので、現状ではアメリカに送る必要があり、そのため結果が出るのに約1ヶ月を要します。 代表的な食品96品目に対する反応が棒グラフで表示されます。ただIgG抗体は保持していて当然の抗体なので、棒グラフにまったく反映されないということはありません。

 

棒グラフが長いほど反応が強いものの、反応があって当然の抗体なのでレベル2くらいまでは何の問題もありません。しかし、レベル4以上になると身体に慢性の炎症を起します。それは、免疫複合体というのができて、慢性の炎症が出て、それが、身体をぐるぐる回り、身体のどこかで症状を起こし、リーキーガットが起こり、劣悪な腸内環境となります。

 

遅発型アレルギーの症状を改善するには、陽生反応のある食品の除去が大切ですが、良い物はきちんと摂る必要があるので、除去をした食品で得られていた栄養を何で補うかということが除去食を取り組む際にはとても重要になります。

 

腸内細菌のバランスで、最近は細菌の遺伝子を調べることで、どんな菌が何%くらいあるかというのがわかるようになりました。・『毎日ヨーグルトを食べて乳酸菌を摂っているから、私は大丈夫』と思っていても、必ずしもそれが上手く反映されるワケではありません。

 

腸内細菌というのは人それぞれ違うので、Aという乳酸菌が良いと言っても、全員が良いというわけではないので、合わなければ変えるということも必要です。

 

健康的な腸内フローラのために出来ることは、

 

1、加工食品を避け炎症を抑える食品を摂ること。加工食品は悪玉菌やカンジダ菌繁殖の原因になります。

 

2、抗菌ハーブであるオレガノやバジルなどは、悪玉菌を減らし善玉菌を増やす効果があります。

これらのハーブは毎日摂取することがおすすめです。

 

3、間欠的な断食として、12時間~18時間の断食もおすすめです。

 

4、コーヒーやハーブティの摂取は、善玉菌を増やす抗酸化物質が豊富です。

 

5、高品質の乳酸菌サプリメントを摂りましょう。

 

6、プレバイオティック食品の摂取が大事です。

 

7、腸修復のための栄養摂取は、リーキーガット症候群の場合、グルタミンヤビタミンAの摂取が

大切です。

 

健康的な腸内フローラのためというと、わかりにくいかもしれませんが、『腸内環境のために』と考えるとわかりやすいと思います。これはほとんど基本的食生活となります。
まず、加工食品は避けること。添加物や加工食品はできるだけ避けましょう。
それは、悪玉菌やカンジダ菌の繁殖の原因になるからです。悪玉菌やカンジダ菌が増えるとリーキーガット症候群になるという悪循環に陥入ります。

 

抗菌ハーブは有効だと言われており、オレガノオイル、黒くるみの成分は抗菌の働きがあって、悪玉菌や特にカンジダ菌に良いと言われています。

 

最近、『断食(ファスティング)』が流行っていますが、3日~5日のファスティングはしっかりとしたサポートを得ながら取り組まないと、栄養や水分あるいはリバウンドなど多々問題があります。短時間で間欠的な断食なら、1日12時間くらい。半日程度~2/3日くらいの断食は週に1回くらいあっても良いというようなデータが出始めています。

断食の良いところは、「腸を休める」ところです。臓器を休めてあげる。
臓器を休めてあげることによって、エネルギーの消費が少し抑えられて、疲労が減るということもあります。更に、解毒(デトックス)。断食のひとつの目的は解毒なので、解毒機能が高まるということもあります。長期間の断食については、いきなりは絶対やめた方が良いですし、もしも、やる場合にはきちんと専門の知識を持った方に管理をしてもらったうえでやらないと危険をともないます。

 

コーヒーは、善玉菌を増やします。また、コーヒーやハーブティには、善玉菌を増やす抗酸化物質も非常に豊富に含まれていますので、大腸がんを予防することにもつながるのですが、過剰なカフェインの摂取は良くないので、気をつけましょう。

 

乳酸菌(善玉菌)は植物性の発酵食品での摂取がお薦めです。しかし、それでも変わらない場合は、高品質の乳酸菌サプリメントを摂ることを考えてもらいたいと思います。

また、プレバイオティクス食品(オリゴ糖とか食物繊維とかネバネバした食品)は、乳酸菌(善玉菌)のエサになりますので、一生懸命摂った方が良いでしょう。

 

腸修復に必要なための栄養摂取を考えると、リーキーガットの場合は特にグルタミン(アミノ酸)とビタミンAを摂ると腸管粘膜の修復を早めてくれると言われています。

 

もちろん、リーキーガットでなくても、グルタミン酸とビタミンAを摂った方が良いのですが、乳酸菌を摂ったり、食事を変えてみても良くならない場合は、サプリメントでの摂取をお勧めします。

 

(2015/06/28aaf協会「もっと腸内フローラ」2澤登雅一先生

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