腸には100兆もの細菌が棲息していますが、これらの菌の遺伝情報の合計は人の遺伝子の100倍にのぼると言われています。また、腸には、脊髄と同じ程度の5億ほどの神経細胞が存在していると言われています。
腸内細菌は、脳ともコミュニケーションする?
腸と脳はこうした神経細胞を介してつながっており、脳と腸だけでなく、腸から脳へと情報が伝わることもわかってきています。「腸は第2の脳」と呼ばれているように、ストレスを感じるとまずお腹が反応して、便意や痛みなどに現れ、脳が後追いするように認識するケースも少なくありません。

こうした腸と脳のコミュニケーションは「腸脳相関」と呼ばれていますが、腸は菌たちともコミュニケーションしていますから、最近では、腸内細菌を介して脳に影響を与えていることも指摘されはじめています。
腸の炎症を起こす「リーキーガット」とは
小腸は、無数のひだで覆われ、このひだはさらに無数の絨毛でおおわれている構造になっており、これを広げた表面積はテニスコート1面分になるとも言われています。

それだけ広大なスペースで必要な栄養素を吸収しながら、なおかつ不要な異物の侵入を阻止するという微妙な関所の役割を果たしています。
実際、小腸には、細菌などの異物の侵入に備えて、数多くのリンパ節が存在しています。特に大腸との境目には数多くリンパ節が存在するため、集合リンパ節(パイエル版)と呼ばれ、こうしたリンパ節には、体全体の60%ものリンパ球(白血球の1種)が集結していると言われています。

免疫細胞の主役となるリンパ球は、IgAと呼ばれる抗体をつくって腸管に排出し、小腸内の細菌に結合することで侵入を阻止します。また、そうした有害な菌の活動自体もある程度抑制しています。通常であれば、こうしたリンパ球の働き、さらには大量の粘液などによって小腸の関所の機能は保たれるのですが、食生活の乱れなどが続くことで大きなトラブルが発生します。その一つが「リーキーガット症候群」と呼ばれる、小腸を構成している粘膜細胞のバリア機能の低下です。

リーキーは「漏れる」を意味し、ガットは「腸」ですから、「腸管壁侵漏症候群」と訳されていますが、健康上の問題になるのは、排除されるはずの異物が体内に侵入してしまう点にあります。小腸という関所が壊れることで、有害な菌はもちろん、未消化の栄養成分などが体内に取り込まれ、腸の一帯をはじめ、全身の細胞へと運ばれます。体が必要としていない異物が全身に運ばれていくことによって、体のあちこちに慢性的に炎症が生じ、様々な病気の引き金になっていく可能性があるのです。腸という器官のトラブルは腸のみにとどまらず、全身の病気につながる所に問題があるのです。
腸の病気を治す近道は「食養生」にある
もちろん、こうした菌の侵入が頻繁に生じれば、腸の粘膜のバリアが破壊されて、アレルギーや自己免疫疾患などの原因にもなります。
食物アレルギーは、小麦や蕎麦、卵など、腸内に侵入してきたアレルゲン(アレルギーの原因物質)に免疫が反応してしまうことで起こりますから、まさにリーキーガットが引き金になるといって間違いないでしょう。
腸のバリアの主役は、小腸の粘膜を構成する上皮細胞ですが、その細胞群にはいくつかの種類(呼吸上皮細胞や肺細胞)があり、通常はそれらの細胞が様々なバリアを築き、腸内の有害な菌の侵入やその毒素の分泌を抑止したり、アレルギーの原因になる食物抗原(アレルゲン)の侵入を防いだりしています。
また、小腸にはIgAと呼ばれる抗体以外に有害な菌の繁殖を抑える成分(抗菌ペプチド)を産出する細胞も存在します。そのほかにも神経伝達物質であるセロトニンなどのホルモンも上皮細胞で産出され、腸の健康に一役買っています。菌の侵入を許してしまうと、腸内の多様な免疫の働きも阻害され、代謝にトラブルが生じ、心身のバランスが損なわれてしまうことになるのです。
精製した糖質、食品添加物などの過剰摂取、さらには抗生物質などの薬物の多剤投与などが、バリア機能の低下→菌の侵入に関わっているでしょう。

細菌では、SIBO(小腸内細菌異常増殖症)と呼ばれる疾患も増加してきました。小腸で細菌が異常増殖してしまう病態で、すべての人に症状が現れるわけではありませんが、高齢者の20%、パーキンソン病患者の50%にこの病態が見られると言われています。
原因としては、菌を殺すのに必要な胃酸の減少に加え、すい炎、小腸のぜん動運動障害、胆汁の減少などが挙げられます。この病態が生じることで、食事のたびにお腹が張ったような膨満感に悩まされるほか、胆汁酸の量が減少することで胆石になったり、脂溶性ビタミンの吸収障害を介して骨粗鬆症になったりすることもあるのです。

SIBOに関しては、海外では抗生物質で対処することが普通のようですが、体質改善を図りたい場合、植物の感染防御因子であるファイトケミカルを多く摂るように心掛けましょう。
出典 「佐古田式養生で120歳まで生きる ~ する・しない健康法」 佐古田 三郎 著